2010年8月9日月曜日

North Bird / 寺久保エレナ

  昨日の大阪のライブの興奮がさめやらぬうちに彼女のデビューアルバム「North Bird」を聴いている。





「North Bird」 寺久保エレナ

Member:
  • Erena Terakubo (as)
  • Kenny Barron (pf)
  • Christian McBride (bs)
  • Lee Pearson (ds)
  • Peter Bernstein (gt)
Recorded at NY, March 28,29, 2010

  1. Yes Or No
    ウェイン・ショーターの曲。いきなりエレナのカデンツァから入る度肝を抜くパッセージ、印象的なリズムのあとテーマが始まる。エレナの力強いソロに聞き入ってしまう。デビュー作一発目の曲・ソロという緊張や力みはまったくない。完全に吹ききっている。

  2. Black Narcissus
    ジョー・ヘンダーソンの手による3拍子のリリカルな曲。優しく語りかけるかと思えば一気に情熱を燃え上がらせるような熱いフレーズを吹くエレナ。

  3. Stablemates
    Benny Golsonの曲でスタンダードとして多くのミュージシャンが取り上げている。ギターのPeter Bernsteinの短めのソロのあとエレナのソロ、ケニー・バロンのソロ。

  4. My Foolish Heart
    ライブではエレナのサックスソロから始まっていたが、アルバムではピアノのイントロから始まる。美しいソロ、サックスを鳴らしきった音。カデンツァは短い。残念。ライブの時の圧倒的なカデンツァが聞きたかった。

  5. North Bird
    山下洋輔が彼女の才能に惚れ込みデビュー作のタイトルとなったこの曲を提供した。ミディアムテンポの小気味良いリズムに乗ってエレナの遊びごころにあふれたソロが聴ける。

  6. It's You Or NO One
    ライブではアンコールに演奏してくれた超アップテンポの曲。すごい。ソロは荒削りながらこのテンポの速さに臆することなく華麗に吹ききっっている。

  7. Someday My Prince Will Come
    スタンダードの名曲。もちろん3拍子なのだが、ソロの前半のみ4拍子にしている面白い構成。こんな構成のサムデイは初めて。

  8. Tim Tam Time
    エレナの手によるFの循環の曲。友人のオーストラリア土産のチョコレートを食べている楽しいひとときを曲にしたしたとのこと。エレナもケニー・バロンもリラックスして楽しいソロを展開する。セッションのヒトコマを見ているよう。
  9. Like The Sunlight
    キース・ジャレットを思わせるフォークソング調のゆったりとした中で熱いエレナは熱いブローを吹く。
  10. Take The A-train
    ピアノのケニー・バロンのとデュオ。ライブではバークレーから駆けつけた大林武司との息のあったプレイが印象的だった。


  North Birdというタイトルから、北海道発のパーカーもどきという印象を期待すると裏切られるだろう。彼女はパーカー派とかバップ系などという枠にはもはやおさまりきれない、すでに18歳にして楽器の鳴らし方、自分のスタイル、方向性が完全に見えている一流ミュージシャンだ。もちろん定番のフレーズのいわゆるパーカーフレーズを聴くことができるが、完全にフレーズ・コード・バックのリズム隊との呼吸を理解して必然として吹いている。

  ケニー・バロンやクリスチャン・マクブライドというNYのそうそうたるミュージシャンを迎えての初レコーディングなのだが完全に対等に渡り合って、というか融合して非常にクオリティの高いアルバムに仕上がっている。

レコーディングの頃のエレナちゃんのブログ:http://ameblo.jp/erenasax/archive-201003.html


CDの中で10曲を入れるためか、エレナちゃんのソロがそれぞれ短くなっているのが残念。彼女のソロは中盤から後半の次第に熱くなってくるところが魅力のひとつだが、その前にソロが終わってしまっている。今回のツアーのライブ盤を出して欲しい。1時間のセットを2個なので2枚組のライブアルバム。キングレコードでは無理だろう。澤野工房さん、ご検討ください。

やはりCDのメディアだけでは彼女の魅力をすべて理解するのは難しい。彼女の演奏すべてをCDという枠で表現すること自体が無理なのである。もちろんライブに行くのが最適であるのは間違いない。CDのいうメディアで彼女のアルトの音圧を表現するには今回のCDの録音・ミックスダウンの技術がついて行けなかった印象を受ける。

それはエレナのサックスの音が軽めに処理されていること。実際のエレナのサックスの音のダイナミクスは低周波側の圧力が大きく、ライブで聞くとその圧力に圧倒される。セルマー製のアルトを完全に鳴らしきっている。やはり実際のエレナちゃんのライブを聴いて圧倒されて欲しい。やはり北海道の人は羨ましい。聴ける機会が多い。9月の東京ジャズにはロン・カーターらとの共演が予定されている。今年のうちに「今のエレナ」をぜひ聴いて欲しい。もちろんライブで。

バークレーに行く前に関西にもう一度来て下さい。

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